測定してよい箇所、測定してはいけない箇所 (測定カテゴリー, CAT表記)
計測器の測定範囲の仕様が1000Vだからといって、どこでも測定していいわけではありません。計測器には、測定範囲だけではなく、その計測器が測定できる箇所も仕様に書かれています。これは、突発的な電圧(過渡的な過電圧)が発生し得る大きさが、測定箇所によって異なる、という考え方から、決められています。
測定できる箇所の考え方
配電盤で測定する200Vと、コンセントで測定する200Vの違いを考えてみましょう。
測定箇所が違うだけですので、どのような計測器でも問題ないと考えるかもしれません。しかし、電源の供給側に近い配電盤では、突発的な電圧(過渡的な過電圧)が発生する可能性が高いと想像できます。例えば、モーターが作動したり、開閉器が作動したり、雷が発生したり、様々な原因が考えられます。もちろん、コンセントにも過渡的な過電圧は発生しますが、配電盤の過電圧よりか、小さな電圧となります。
そこで、発生し得る過渡的な過電圧を考慮して、測定箇所の種類を「測定カテゴリー」という分類をしています。
測定カテゴリーはどこに書かれていますか?
通常、仕様書、計測器の端子、クランプセンサ、プローブの先端などに、測定カテゴリー(CAT, 「キャット」と読む)と、対地間電圧がセットで書かれています。
このクランプ電流計の場合、次のような仕様となります。
- 電流測定(クランプセンサ): CAT IV(キャット・フォー) 600V, CAT III(キャット・スリーと読む) 1000V
- 電圧測定、抵抗測定: CAT IV 600V, CAT III 1000V
このように測定できる箇所を示す測定カテゴリーと、対地間電圧の2つの数字で決められています。
計測器は、その過電圧に耐えることができるように設計されています。逆に、間違った測定カテゴリーの計測器を使用すると、事故が起きる可能性があります。
測定カテゴリーの例
測定カテゴリーや対地間電圧の説明する前に、ここでまず、代表的な具体例をあげます。
測定箇所 | 測定カテゴリー | 対地間電圧 | 必要スペック | |
---|---|---|---|---|
100Vのコンセント | コンセントはCAT II | 100V | → | CAT II 300V以上 |
分電盤(単相)のブレーカー | 分電盤はCAT III | 100V | → | CAT III 300V以上 |
キュービクル内の三相電源 | キュービクルはCAT IV | 240V | → | CAT IV 300V以上 |
電化製品内のデジタル回路(5V) | 製品内部はCAT II | 5V | → | CAT II 300V以上 |
測定カテゴリー
予想される過渡的な過電圧により、測定箇所を、CAT II (キャット・ツー)、CAT III (キャット・スリー)、CAT IV (キャット・フォー)の3種類に分類します。
CAT IIが消費側、CAT IVが供給側になりますので、CAT IVの方が安全性が高い計測器になります。
CAT II (測定カテゴリII) |
コンセントに直接接続する機器の電源プラグから機器の電源回路まで |
CAT III (測定カテゴリIII) |
分電盤から電力を直接取り込む機器(固定設備など)の電源配線と電源回路、および分電盤からコンセントの裏側の配線端子までの配電路 |
CAT IV (測定カテゴリIV) |
建造物への引き込み電路、引込口から電力量メータおよび分電盤までの電路 |
CATを満たしていない計測器で測定すると、重大な事故につながりますので、絶対に使用しないでください。
対地間電圧
測定箇所に発生している対地間電圧により、計測器を分類しています。通常、300V, 600V, 1000Vの3種類ですが、その他の数字の場合も稀にあります。
ここで注意することは対地間電圧であることです。三相4線式の400V系の電路では、線間電圧は415Vですが、対地間電圧は240Vです。
予想される過渡的な過電圧
安全規格は、測定カテゴリーと対地間電圧から、下表のように耐えうる過渡的な過電圧を定めています。
- 過渡的な過電圧の大きさは、対地間電圧の10倍ぐらいを想定している
- 測定カテゴリーの数字が大きく、対地間電圧が高いほど、高い過電圧に耐える
ということがわかります。
対地間電圧 [V] | 過渡過電圧の値 [V] | ||
---|---|---|---|
CAT II | CAT III | CAT IV | |
300 | 2500 | 4000 | 6000 |
600 | 4000 | 6000 | 8000 |
1000 | 6000 | 8000 | 12000 |