漏れ電流の原因を突き止める
写真/図面イベント記録漏れ電流は大きく分けて、次の2種類があります。
漏れ電流の種類 | 原因として考えられる要因 | 漏電ブレーカの作動 |
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常時流れる漏れ電流 | 電気機器の絶縁不良 配電設備の絶縁劣化 |
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間欠漏電: 不定期に瞬時的に流れる漏れ電流 | 機械や人が動いたときなど、様々な原因がある。 | 作動しても、あたかも漏電の問題がないかのように再投入できる。 |
どちらの漏れ電流でも原因を取り除くために、配電盤、分電盤、機器というように、上流から末端に原因となる箇所を絞り込んでいきます。通電状態ですと漏れ電流を、停電状態ですと絶縁抵抗を測定します。
ここでは、GENNECT Crossを使った、原因追究の方法を説明していきます。
常時、漏れ電流が流れていることを記録、報告する
漏電ブレーカが作動している場合
漏電ブレーカが作動しているなら、原因となる回路が停電状態になっているので、漏れ電流を測定することはできません。
- 各分岐回路の絶縁抵抗を測定して、原因となる回路を探します。
GENNECT Crossの写真/図面測定機能を使って、各分岐回路の絶縁抵抗値を記録して、報告書を作成しましょう。
ただし、問題となる電気機器が通電されていないと、絶縁が良好になる場合があるので、この測定で原因がわかるとは限りません。 - 複数の分岐ブレーカの中から、1つだけONにして、漏電ブレーカをONにします。
漏電ブレーカが入れば、その分岐回路は問題ないということになります。念のため、漏れ電流用クランプ電流計で漏れ電流の大きさを測定しておきましょう。
このときも、GENNECT Crossの写真/図面測定機能を使って、分岐ブレーカのON/OFFが見えるように写真を撮り、漏れ電流の大きさを記録していけば、間違いのない報告書となります。
漏電ブレーカが作動していない場合
漏れ電流用クランプ電流計で漏電ブレーカに流れる電流を測定すると、漏電ブレーカの作動電流には達していないけれど、大きい値を示すことがあります。または、漏電警報機が鳴ることもあります。
近い将来に漏電ブレーカが落ちるほどの漏れ電流が発生する可能性があるので、その原因を調査しておく必要があります。
漏電ブレーカが作動していないということは、それ以下の回路は通電状態であるので、漏れ電流用クランプ電流計で測定できます。
各分岐回路の漏れ電流を測定していきます。
このとき、GENNECT Crossの写真/図面測定機能が非常に役立ちます。
配電盤や分電盤の写真を撮り、写真上のブレーカ付近に漏れ電流の測定値を配置していきます。この写真がそのまま、報告書として活用できます。
常時、一定な漏れ電流が流れているなら、瞬時値を記録すればいいです。もし変動しているならば、最大値を測定すれば傾向をつかむことができます。
クランプ電流計には、統計測定モードがあります。表示値として、瞬時の値が更新されるのではなく、測定を開始してから、最大値、最小値、平均値を表示します。
間欠漏電を捉える
間欠漏電とは、まれに瞬時的な漏れ電流が発生し、それ以外のときは正常状態である漏電をいいます。漏電ブレーカが作動したとしても、再投入できることが多いです。しかし、発生源を改修できていないので、忘れた頃に漏電ブレーカが落ちます。
原因は非常にわかりにくいことが多いです。例えば、被覆の一部が絶縁劣化した電線を動いたり、踏んだりしたときだけ、金属部に触れて漏電するなど、動作をともなう原因があります。
間欠漏電はこのような特徴があるので、問題となる分岐回路を見つけるには、長期間にわたり漏れ電流を測定し、間欠漏電が発生するまで待たなければなりません。
従来なら、波形記録計やデータロガーを使って長期測定していました。その代わりに漏れ電流用クランプ電流計とGENNECT Crossのイベント記録機能で、間欠漏電を捉えることができるようになりました。
測定例
ここでは話を単純化するため、図のようなホーム分電盤のような小さな単相盤で説明します。
この漏電ブレーカーが不定期に度々作動して、悩まされています。漏電ブレーカーが作動後、復電できることから、間欠漏電の疑いがあると判断しました。どの分岐回路が問題なのかを見つけて、改修したいです。
そこで、GENNECT Crossのイベント記録機能を使って、問題となる分岐回路を絞り込みます。
1. しきい値と記録時間をGENNECT Crossで設定する
まず、イベント記録機能のしきい値を決めます。イベント記録機能は、しきい値以上の漏れ電流が発生したとき、その開始時間、終了時間、漏れ電流の最大値を記録します。つまり、しきい値の設定が重要になります。
イベント記録機能について詳しくは次のページを御覧ください。
しきい値を決めるために、次のような要素があります。
- 常時流れている漏れ電流を測定する。しきい値をその漏れ電流以下に設定すると、常にイベントが発生したことになりますので、正しく測定できません
- 漏電ブレーカーの仕様から判断する。定格感度電流、定格不動作電流、動作時間から、漏電ブレーカーの作動したときの漏れ電流の大きさを予想します。それがイベントとして測定できるようにしきい値を決めます。しきい値を小さく設定すると、漏電ブレーカーが作動しないような小さな漏電電流も記録できます
※ CM4001のイベント記録件数は、最大99件。CM4002, CM4003は999件です。
電池駆動の計測器ですので、少しでも長く測定できるように、次のことを確認してください。
- 新品の電池に交換する
- 測定が始まれば、Bluetooth®通信をオフにする。測定中は通信が必要なく、イベントデータは計測器本体に蓄えられます
※ CM4001の連続測定時間は約1日。CM4002とCM4003は約2日。CM4003はACアダプタでも駆動可能です。
GENNECT Crossと計測器を接続し、しきい値と記録時間を設定します。
2. 計測器を設置する
サービスブレーカーの2次側には、CM4002またはCM4003(クランプセンサの径: φ40mm)を設置します。分岐回路には、センサの口径が小さいCM4001(φ24mm)を設置します。
3. GENNECT Crossの「記録開始」ボタンをタップして、記録を開始する。
記録を開始しますと、計測器をGENNECT Crossに接続する必要はありません。計測器のBluetooth®通信機能をオフにすると電池寿命が延びるので、記録時間が長くなります。
4. 記録が終了したら、計測器をGENNECT Crossに再接続して、記録データを回収します
設定した記録時間が終了しますと、計測器は記録を停止します。もしイベントデータを1件でも記録した計測器は、LCDのバックライトが赤色に光ります。
計測器のBluetooth®通信機能をオンにして、GENNECT Crossに接続します。計測器に記録されたイベントデータをGENNECT Crossで回収すると、すぐにグラフ表示されます。
今回使用した、4台の漏れ電流計で記録したイベントデータを、時間軸を合わせてグラフ化されます。イベントデータ(発生時間、終了時間、最大電流)から、例えば次のようなことが考察でき、間欠漏電の原因追究に役立ちます。
- 分岐回路Aと分岐回路Bが同時に漏電が発生している。しかし、漏電ブレーカーは不動作領域だった。分岐回路AとBに相間関係がある、潜在的な問題があるかもしれない
- 漏電ブレーカーが作動した時間と、分岐回路Cで漏電を記録した時間が一致する。間欠漏電の原因は、分岐回路Cが疑わしい
それでも解決できない場合は電力計または波形記録計
もっと長期間測定したいときや、詳細に測定したいときは、従来通りの電力計や波形記録計を使用した測定となります。
CM4003は、波形や実行値を出力する機能がありますので、その出力信号を電力計や波形記録計で記録して、詳細な測定をできます。また、ACアダプタで駆動しますので、長時間に亘る測定も安心です。
もし、間欠漏電が発生したらすぐに知りたければ、遠隔から監視できるGENNECT Remoteを組み合わせることができます。漏電が発生すると、警報メールを受信し、遠隔地からでも知ることができます。
>>GENNECT Remoteを使用した遠隔監視方法についてさらに詳しく